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ある日のあなたや私の後姿。村下孝蔵さんの【東京哀歌】歌詞の意味や世界観を解説&鑑賞

村下孝蔵 東京哀歌 アイキャッチ
おうじゃ(管理人)
(記事内にプロモーションを含む場合があります)

今回は「東京哀歌」を取り上げましょう。

文字通り東京での人々の暮らし、その様子をモチーフとしている楽曲ですが、村下さんはこれをどのように料理したのでしょうか??

おそらく通好みの一曲ですから、ここで新たに触れる方もいらっしゃるかもしれませんね。

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参考:村下孝蔵さん楽曲解説特集🎸

当サイトは非公式のファンサイトであり、ファンの皆様がご自身なりに楽しめる場を提供することを目的としています。同時に、村下孝蔵さんの全楽曲、とりわけその歌詞の意味や世界観を解説することを主たる目標に掲げています。

⇒村下孝蔵さん楽曲解説・歌詞解題についての詳しい「考え方」はこちら

ご興味のある方は、以下の記事もお楽しみいただけるはずと自負しておりますので、お時間のあるときにどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

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(解説楽曲例:ロマンスカー、だめですか、いいなずけ、北斗七星、夢からさめたらなど)

⇒「踊り子」など代表曲はこちら

管理人なりに全力で取り組みましたので、皆様が村下さんの楽曲を別な視点から楽しむ参考になることだけは請け合いです☆

下部に歌詞全文を用意しました、適宜ご利用くださいね。

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🎵 当記事の著者について

当サイト管理人

新おうじゃ

名前 / Name  
おうじゃ 

職業 / Occupation
生来詩人、お米賞味マイスター、歌詞解説・鑑賞家、福話術者(家庭教師も兼業)

実績 / Achievements
生まれたときから詩的な人生を送っています。村下孝蔵さんに出逢ってから、その楽曲を肌身離さず心に持ち歩いては味わってきました。
姉妹サイトではシティポップの楽曲解説や、自身の生活の中で頂いたお米の銘柄の特徴をレビューしつつ【福話術】と題したあらゆる人の心に寄り添う記事を執筆、分野を開拓しています。

(姉妹サイト「おうじゃの福眼」プロフィールページへ遷移します)

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楽天ミュージック
『新日本紀行』所収

“東京哀歌”

(遷移せずこの場で再生できます▶)

海に漂う青い灯は
星屑か難破船か

解題

タイトルから想像される本楽曲全体のテーマを凝縮した、夜の底に響くようなイントロが印象的です。

男女の関わりがベースにあるのは確かですが、そこにとどまらず人間存在そのものの様子に触れていく村下さん後期作品によくみられるテイストでしょう。

基本的な場面設定としては、東京(すなわち都会)に暮らしている男性が、何らかの縁でつながりを持った女性との関係を見つめているというものです。

そうするうちに自分やお相手の女性のあり方、都会の風景とその背後に存在する人間たちの模様などを感じ取っています。

とある酒場で長い時間を過ごし、深夜を過ぎてあいまいに散会した後で、男性はひとり港の見える場所を訪れます。

低い水の音だけが聞こえる真っ黒の「海に漂う」ぼんやりとした「青い灯は」、男性にとって暗い曇り空から落ちた「星屑か」、あるいは行き場をなくした「難破船か」と見えました。

夜の都会の水際で
はぐれてる男か
眠れない東京

空虚で幻想的な海に吸い込まれていきそうでしたが、我に返ると男性は目の前の情景が自分の身をそのまま写し取っていることに気づきます。

この深くて暗い東京という「夜の都会の」底知れない海の「水際で」、人生に迷いこんで「はぐれてる男か」のような青い灯は、寂しささえ表すことなく浮かんでいる。

自分のような人間の無数の生を包含して、休むことができず「眠れない東京」という街……。

ダルマ師匠
ダルマ師匠

ここで男性は、東京の街が人間たちの集合を反射する鏡のようだと実感したのじゃろうか。

踊るあのこには 笑顔さえもなくて
家も名前もなく 夢すら忘れ
汗の波 音にまみれ
迷いこんで 闇に消える

そんな東京のどこかには、必ずそれぞれの人生で「踊るあのこ」がいる。

厳しい暮らしを支えるその子「には」幼い日の「笑顔さえもなくて」、本人も気づかないままがむしゃらに生きている。

もはやとどまるべき「家も」名乗る「名前もなく」、都会へ出てきた頃あるいは成長する過程で仰ぎ見ていた「夢すら忘れ」、生活のために流れる「汗の波」と自他のあらゆる喧騒の「音にまみれ」てしまった。

そうした誰もが東京の深い海に「迷いこんで」行方も知れず「闇に消える」のを、最も身近な自分の身に見出したとき、男性は愕然とします。

ここでは不特定の「あのこ」ととらえましたが、もちろん男性が関わりのあった女性のことを指す側面もあると考えられます。

その女性や自分をも含めて「東京」の気配を感じているわけですね。

ヘッドライトに照らされて
目をやられ 跪いて

そのまま心と身体が闇に沈んでいくのに任せることもできず、帰り道を探せば真正面から射す「ヘッドライトに」自分の顔を明るく「照らされて 目をやられ」てしまいます。

いっそ自分のすべてが街に呑み込まれてしまえば、こんな自分のあり様を見せつけられず、安楽に過ごすことができるのかもしれないのに――。

男性と、東京に住む無数の人々は同じく「跪いて」います。

痩せた天使は楽園へ
ただひとり 漕ぎだす
眠らない東京

男性や人々の姿なのか、この街で精いっぱいに生き、揉まれ、跪くうちに「痩せた」薄い影の「天使は」救いを求めて「楽園へ」召し取られることを願います。

しかし「ただひとり 漕ぎだす」その先は、これまでもこれからも暮らしていくこの深く黒い「眠らない東京」という街なのでした。

かんむりちゃん
かんむりちゃん

東京に足を踏み入れた時点で、そこを訪れる人間にとっては「楽園」でもあり闇でもあるということかしら。

人間であることそのものについても同じことが言えるのかな……。

回るあのこには 言葉さえもなくて
愛も涙もなく 歌すら忘れ

昨夜も今夜も明日の夜もこの街で「回るあのこには」、もはや自分の想いを語る「言葉さえもなくて」、大切な誰かと交わす「愛も」心を震わせて流す「涙もなく」なった。

かつて大好きだった「歌すら忘れ」たその様子が遠くにも近くにもはっきりと見える男性は、なぜ誰もがそうなってしまうのか、自分がそうなることをなぜ避けられないのか、言い表せない感情がこみ上げます。

熱帯の 風に吹かれ
彷徨って 朝を迎え
汗の波 音にまみれ
迷いこんで 闇に消える恋

たくさんの吐息や匂いがまざった昏くぬるい「熱帯の 風に吹かれ」、あの子も男性も痩せた天使もみな「彷徨って」絶え絶えに霞んだ「朝を迎え」ます。

この街で生きることに魂を費やして流れる「汗の波」、否が応でも発生する入り乱れた不確かな「音にまみれ」、誰もが東京の果てしない海に「迷いこんで」いく。

そのまま男性とあの子の、天使と神あるいは悪魔の、同じ街に生きながら想像さえできない者同士のかかわりは、身になじんだ東京の「闇に消える」のを待つだけの儚い「恋」のように、波の向こうへ流れ去っています。

身体的な表現を多く用いながら、人間の精神や社会の本質的な様子・はたらきまで描いた大名曲だといえるでしょう。

聴きどころ

なんといってもサビへ向かう盛り上がりが最高ですね!

テーマの重さからして、あまりビビッドな(?)音の展開ではそぐわない気がしますけれど、そこはさすがに村下さん、歌詞と音楽からくる感情の展開ピッタリのメロディです。

最後のサビがもう一度重なるところも「東京に巻き込まれていく感」がすばらしいです~!

管理人の感想(あとがき)

この曲もしばらく村下さんとお付き合いするうちに味わいが楽しめるようになるタイプですかね~。

東京の様子を描いた作品に「斜塔」(『夢の跡』所収)というものもあるのですけど、そちらはだいぶテイストが異なる一曲です。

確か村下さんが最初に東京へ出てきたときの印象を歌ったのが「斜塔」で、それから時を重ねるうちに本楽曲のようなイメージを抱いていったとどこかで読んだ覚えがあります。

まとめ

今回は村下孝蔵さんの「東京哀歌」を解説してまいりました。ぜひ皆様もご自分なりの解釈で楽しんでみてくださいね☆

他の楽曲解説もご覧になりたい方は、歌詞全文下部↓のリンクへどうぞ。(直近の解説楽曲は「西陽のあたる部屋」でした)

東京哀歌【歌詞全文】

海に漂う青い灯は
星屑か難破船か
夜の都会の水際で
はぐれてる男か
眠れない東京
踊るあのこには 笑顔さえもなくて
家も名前もなく 夢すら忘れ
汗の波 音にまみれ
迷いこんで 闇に消える

ヘッドライトに照らされて
目をやられ 跪いて
痩せた天使は楽園へ
ただひとり 漕ぎだす
眠らない東京
回るあのこには 言葉さえもなくて
愛も涙もなく 歌すら忘れ
熱帯の 風に吹かれ
彷徨って 朝を迎え
汗の波 音にまみれ
迷いこんで 闇に消える恋

(作詞・作曲:村下孝蔵 編曲:水谷公生ー1991年4月25日)

この歌詞全文の引用は「東京哀歌」の魅力を解説するため、および閲覧者の方々の便宜のための必要によってなされたものです。

関連記事ーその他楽曲解説・小ネタなど

ここまでお読みくださってありがとうございました!

村下孝蔵さんには他にも素敵な楽曲がたくさんあります。

当サイトでこれまで取り上げた楽曲を改めて掲げておきますので、お時間のあるときにぜひ遊びにいらしてくださいね。

また、村下さんに関するちょっとしたネタやカバーしている方の情報なども順次まとめています。

ご興味があればTOPページからご覧くださいませ

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